お料理をするときの調味料として、塩はないともっとも困るもののひとつです。台所には必ずすぐ届くところに塩を置いてあるでしょうし、食卓にも塩を置いてある家庭は多いでしょう。
塩の種類は作り方・製法によって、また作るときに使われる原料によっていくつかに分かれます。それぞれの塩は味も値段も、そして成分も異なります。塩はどのように使い分ければよいのでしょうか?どういった塩がどの料理に合うの?毎日の食事になくてはならない塩の種類についてまとめました。
作り方・製法による分類
塩は作り方・製法により大きく3つにわけることができます。
精製塩
一般的に「食塩」または「食卓塩」として売られているもので、もっともよく使われる塩です。精製塩は海水を電気分解してナトリウムイオンを抽出して作った濃い塩水を煮詰めてできあがった塩の結晶です。この製法は、イオン交換膜透析法といいます。精製塩のパッケージには、この作り方を「イオン膜」と記載しています。
精製塩は大規模生産されていて品質は安定しており、値段も安いです。ナトリウムイオンを抽出して作っていますから、ミネラルなどの成分は取り除かれており、成分は塩化ナトリウムが99.5%以上とほとんどです。触ってみるとサラサラしていることが特徴で、水に溶けやすいです。
天然塩・自然塩
天日塩
塩田で海水を蒸発させることで作られた塩が天日塩です。太陽と風、2つの自然の力で海水を乾燥させて作るため、雨が多く湿度の高い日本で作ることは難しく、天日塩はほとんどが輸入品で、メキシコやオーストラリア沿岸部の地域で多く作られています。生産には手間がかかることから、値段は高いものが多いです。
天日塩はサラサラしていることが特徴です。自然の力だけで作られているため海水の風味が残っており、ミネラルがたっぷり、カルシウムやマグネシウムも入っています。味はナチュラルで甘みがあります。
せんごう塩
海水をとって煮詰めて作った塩がせんごう塩です。せんごう塩は原料の違いによってさらに3つに分かれます。海水を濃縮して煮詰めて作ったものが「膜濃縮せんごう塩」、天日塩を溶かして炊き直して作ったものが「天日塩再製せんごう塩」そして岩塩層に水を入れて塩水をとってから煮詰めて作る「溶解採鉱せんごう塩」です。
天然の塩水を煮詰めて作っているため、せんごう塩は天然のナトリウムを多く含み、ナチュラルな風味があります。日本では基本的に天日塩も岩塩も作りにくいため、せんごう塩が一般的です。せんごう塩は安価で手頃なものが多いです
岩塩
地殻変動で海底が隆起したことなどが原因で海水が化石化したものを地中深くから掘り出したものが岩塩です。日本でとることはできず、少量だけ輸入されています。岩塩の中でもきれいなものはそのままミルでひいて食べることもできますが、先進国ではたいてい、岩塩をそのまま食べるのではなく、溶解採鉱塩で炊き直し、せんごう塩にしてから食べます。
岩塩は水に溶けにくく、味がなじみにくいという欠点がありますが、岩塩は塩粒の味がそのまま残るため、蒸し料理や生魚の味付けとして使うことが多いです。地中のミネラルや有機物を含んでいるために、いろいろな色のものがあります。岩塩の味はまろやかで甘みがほのかにあります。値段は高いイメージがありますが、安価で手頃なものもあります。
再製加工塩
輸入した塩や精製塩にミネラルやにがりをつけて成分を調整して作った塩が再製加工塩です。精製塩とは違うことを表すために、以前は「自然塩」や「天然塩」としてうられていた時もありましたが、「自然塩」や「天然塩」と表示することが規約で禁じられたので、現在は「○○の塩」というかたちで売られています。
塩辛さとにがりを人工でつけていることから、再製加工塩には独特の苦味があります。値段は自然塩と比べれば格段に安く、手頃です。
原料による分類
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塩は作るときに使われる原料によって大きく3つにわけられます。
海塩(海水塩)
海のみからとった塩が海塩です。精製塩にしてしまうとミネラル分が失われていまいますが、それ以外の海塩はナトリウムやカルシウム、マグネシウム、カリウムなど海のミネラルがたくさん含まれています。
岩塩
以前は海だったところが海底が隆起して岩塩層となり、そこからとれたものが岩塩です。塩化ナトリウムが結晶化して作られているため、海水塩とは違ってミネラル分はあまり入っておらず、海水塩よりも塩辛さは強いです。
湖塩
海水が岩塩に変わるその途中のものが湖塩です。日本には塩湖はないためとることはできません。死海やカスピ海、ウユニ塩湖(ボリビア)、グレートソルト湖(アメリカ)でとることができます。海塩と岩塩のちょうど間ぐらいの特徴があり、生産量が少ないため非常に貴重です。
粗塩って?
精製塩とは違い精製していない塩は粗塩と呼ばれています。精製していない塩ですからミネラルが含まれています。天然塩も粗塩の一つです。粗塩という名前は成分や法律によってそう呼ぶように定義されたものではありません。ですから、天然塩だけでなく、輸入した天日塩ににがりを加えて作ったもの、または粒子が粗い塩も粗塩と呼ばれています。
風味のついた塩もある!
塩に風味を付けた塩は料理に入れるときに使いやすくて便利です。その1つが「藻塩」です。「藻塩」は日本で古くから使われてきました。塩のもとである海水に海藻のエキスが風味として入っている「藻塩」はミネラルたっぷりで、ほんのり黒っぽいもの、または赤みがかかったものとなっています。
岩塩にハーブやスパイスを加えて香りや風味を付けたものが「フレーバーソルト」です。種類はたくさんあり、「ガーリックソルト」「クレイジーソルト」「ハーブソルト」など様々な種類があります。何のフレーバーを加えているかによって、サラダに入れたり、おにぎりに入れたり、魚料理に入れたり、といろいろな使い方を楽しめます。
塩の選び方
ひと口に「塩」といっても成分はさまざまで味が違うのはもちろん、粒も大粒のものから小粒のものまであるため、それぞれ適した料理が違います。
海水からとった塩は素材の旨味をじんわりと引き出してくれるので魚介類にかけるとよいでしょう。その反対に旨味が強い岩塩は肉料理や根菜にかけるとよいです。
また塩の大きさでいくと、粒の大きなタイプの塩は大きさの分だけ塩辛さが口に残りますから、牛肉にかけたりカツオなど魚にふりかけて食べることがおすすめです。食材の味に塩味が加わり、より食材の味が引き立ちます。岩塩は肉の臭みも消してくれるのでおすすめです。しかし、淡白な味のものは塩味が濃いと食材の味が感じられなくなってしまうので、同じ粒が大きくても塩味は薄いものを選びましょう。
また小さめのタイプの塩は酸味があるものなら油脂の油っこさを取ってくれるので、天ぷらや白身の魚、鶏肉や豚肉の味付けにすると良いですし、苦味のあるタイプのものならトマトなど野菜にかけて食べると良いでしょう。
煮物や煮込み料理に入れる塩はまろやかな味にしたいですから湖塩がおすすめです。時間をかけてぐつぐつ火を通す煮込み料理に湖塩を入れると、甘みや深みが加わって料理をマイルドな味にしてくれます。
いつもの料理に一味プラスしたい、素材の味を活かしながらももう一つなにか加えたいというときは、フレーバーソルトがおすすめです。ハーブやスパイスを加えて作ったフレーバーソルトは料理を引き立てて、さらに美味しくしてくれます。
塩を使い分けてあなたも料理上手に!
塩の種類によって、料理の味はずいぶん変わります。牛肉には岩塩、サラダには天日塩、煮物には湖塩など、それぞれの料理に合った塩を選びましょう。料理によって使い分けてひと味加えることによって、いつも作っていた料理がまるでプロが作ったような味に変わるかも。
塩には本当にいろいろな種類がありますから、スーパーやデパート、旅行先などでも見つけたらぜひ手に入れて、毎日の料理に使ってください。料理がより楽しくなりますよ。