おせち料理の地域による違いを大特集!郷土色豊かな食材たち
全国のおせち料理を調べてみると、地域ごとにそれぞれ面白い特色があることがわかります。生まれてからずっと同じ地域で暮らしていると、自分が小さい頃から食べてきたおせち料理が当たり前になっていて、それしかないものと思ってしまいますよね。進学や就職で故郷を離れたり、ご結婚をきっかけに、自分が食べてきたものとは全く違うおせちを見てびっくりすることもあるようです。
それぞれの地域自慢のおせちにはどのようなものがあるでしょうか?地域色豊かな食材を使ったおせち料理をピックアップしてご紹介します。
地域によっておせち料理に違いがあるのはなぜ?
日本は小さな国ですから、北から南まで行ってもそれほど遠いとは思えません。それなのに、どうして地域によって違うおせち料理が生まれたのでしょうか。
地域色豊かなおせち料理の誕生には、昔の交通事情が大きく関係しています。今でこそ飛行機を使えば北から南まですぐに行くことができますが、昔は流通が発達していませんでしたから、一つの地方の文化が他の地方に広まるということはあまりありませんでした。
文化が伝わりにくかったため、日本ではそれぞれ自分の土地の食材を使って作ったオリジナルのおせちが作られるようになりました。地域の名産がおせち料理の中に入っていますから、食べ比べてみるのも楽しいですね。
個性豊かなおせち料理を地域別に紹介!
日本全国のおせち料理の中から、地域色の強い個性的なおせちを厳選してご紹介します。
北海道・東北
海に面している北海道・東北地方では漁業が盛んだったことから、豊かな海の幸をふんだんに使ったおせち料理が主流となっています。
北海道~東北:氷頭なます(ひずなます)
鮭の鼻先の軟骨が氷頭と呼ばれていることからその名前がつけられました。氷頭の部分を薄切りにしてから甘酢につけて、大根や人参と一緒に和えて食べます。
北海道:口取り菓子
「口取り菓子」とは、お正月のときに食べる練りきり菓子のことです。北海道は非常に寒いところですし昔は交通の便も悪かったために、今のように正月料理の材料を揃えることができませんでした。そのため、お正月料理をかたどった口取り菓子がお正月の定番となったようです。
青森:じゃっぱ汁
タラや鮭などを三枚卸したときに出る頭や内臓、少し肉の付いた骨など「あら」を使って野菜などと一緒に煮込んで作った汁ものです。津軽弁で「雑把」を意味するところから名付けられました。味付けは塩のみであっさりした味わいが特徴。青森県のお正月は非常に寒いために、体があたたまるものをという意味からじゃっぱ汁は正月の定番となっています。
秋田:豆腐カステラ
秋田南部地方の郷土菓子の一つです。豆腐を使ってカステラのような形に加工して作った豆腐カステラは好きな人が多く、秋田地方のお土産品としても人気を集めています。
関東地方
おせち料理にはおせち料理ならではの食材がありますが、関東地方はその産地が揃っています。茨城県のれんこん、埼玉県の「くわい」は特に有名です。
茨城:鮒の甘露煮(古河市発祥)
茨城県古河市の名物として知られているものです。頭から尻尾まで崩れることなくきれいに煮て作られた鮒の甘露煮は、食べてみるとまろやかで自然な甘味が感じられます。昔ながらの製法で作られた歴史を感じる一品です。
千葉:かいそう(海藻こんにゃく)
「かいそう」は千葉県の東部から茨城県南東部周辺で作られてきた海藻こんにゃくです。原材料として使われているのは、コトジツノマタという海藻で、これを鍋で煮込んでから型に流して固めると、かいそうが出来上がります。ミネラルたっぷりで栄養価も豊富です。
栃木:いも串
ふかした里芋の皮をむいて串に刺して焼き、タレを塗って食べる「いも串」は、お餅なしでお正月を過ごす「もちなし正月」の料理として作られて来ました。ねぎみそやごまみそをつけて食べるいも串は大人の間だけでなく、子供のおやつ代わりとしても人気です。
埼玉:くわい(青くわいの生産地)
お正月に食べるおせち料理の具材の中でも高級食材とされているのがくわい(青くわい)です。見た目は里芋に似ており、里芋と同じようにお正月のお煮しめの具材として食べられることが多くホクホクした食感が特徴です。くわいは関西地方でも人気があり「埼玉くわい」のブランド名で関西方面にも数多く出荷されています。
中部地方
山もあって海にも面している県の多い中部地方は、食材が豊富で足りないものがないほどです。山海の幸が使われたおせち料理は、おいしいものばかりですよ。
新潟:のっぺ汁(のっぺい汁)
詳細を楽天レシピで見る
「のっぺ」は、里芋を始め、にんじんやゴボウなどの根菜を鶏肉、きのこ、銀杏などと一緒に煮込んだ料理です。片栗粉でとろみをつける「のっぺ汁」とは異なり、里芋の自然なとろみを活かした煮物としていただきます。冷めてもおいしくいただけるので、おせち料理にはぴったりですね。貝柱やイクラなど海の幸が入ることも多い贅沢な一品です。
石川:べろべろ
溶き卵を寒天でかためて作った「べろべろ」は、お正月やお祭りなど特別に作られる食べ物です。作った後は家族で楽しむのはもちろん親戚や知人に配ります。「祭りを届ける」と言われるもので、お付き合いを大切にする金沢ならではの習慣です。
近畿地方
かつて日本の中心として栄え、歴史や伝統を重んじる近畿地方は、おせち料理にも重みが感じられます。多くの人が知っている有名な料理ばかりですよ。
鯛の塩焼き:関西特有の文化「睨み鯛」
「めでたい」鯛の塩焼きはお正月になったらすぐに食べるものではありません。睨みという言葉のとおり、正月の3が日にはただ睨むだけで食べることは許されません。三が日が過ぎて4日が来たら初めて食べることができます。
京都:棒鱈(ぼうだら)
日持ちするようにという意味で作られた棒だらは、甘みがあって歯ごたえがしっかりしています。お正月だけでなくお祭りのときなどにも食べることが多いそうです。
滋賀:鮒寿司(ふなずし)
鮒寿司は塩漬けした鮒とご飯とを一緒に漬け込み発酵させた保存食で、その歴史は奈良時代まで遡ると言われます。春につけこんで作った鮒寿司は、夏の間に発酵・熟成され、食べ頃を迎えるのは晩秋。手間がかかるだけに、ご馳走感は格別です。
中国・四国・九州地方
海に囲まれた中国、四国、九州地方のおせち料理は、海の幸がふんだんに使われているのが特徴です。
島根:ワニ(サメ)の刺身
ワニ刺身 pic.twitter.com/KIqiTvTciF
? のじょんじょ (@nojo723) 2016年12月30日
ワニと名前がついていますがワニの肉を食べるというわけではありません。ワニとはサメのことで、お刺身はお正月料理の定番です。
福岡:鰤(ぶり)
出世魚の鰤(ぶり)は、福岡ではおめでたい席に欠かせない食材。刺身はもちろん、塩焼き、照焼にして食べるほか、あごだしに鰤の入った博多雑煮は、お正月料理の定番です。
長崎:くじら、なまこ
かつて捕鯨地として栄えた長崎では、「太く長く生きよう」という願いから鯨(くじら)を食べる習慣があります。なまこを食べるのは、その形が米俵に似ていることから、豊作を願うためだと言われています。
その土地ならではのおせち料理を楽しもう
今回ご紹介したのはほんの一部で、地域色豊かなおせち料理は交通事情が劇的に良くなった現在でも、地元の人々に愛され続けています。その地域の人にとっては食べ慣れているものでも、他所の地域の人から見ればビックリするような料理があるのは興味深いですね。
最近では郷土料理のレシピを紹介しているサイトもあり、地域色豊かな食材や料理のお取り寄せもできるようになりました。気になるものを取り寄せて食べ比べてみるのも楽しそうです。